花金は平気で嘘を吐く

汗で湿った帽子に

綺麗なキノコが芽生えた。

このキノコは私から楽しいことを吸い取っていく。

金曜日?明日は土曜日なだけだ。

人生?明日もつづくだけだ。

そんなキノコに私は名前をつけて話しかける。

日頃の不満や憂鬱を。

いつしかキノコは自ら命を絶った。

幸せを奪ったまま。

憂鬱を聞いてくれる友達さえも奪って消えた。

今日も土曜日。

いつになっても憂鬱がたまるだけだ。

ループループ

タイムワープ。

人間が手に入れた

魔法のような技術。

戦争をなくす。

病気をなくす。

人々は希望に目を輝かせる。

私の心にある葛藤もなくすことができるのだろうか。

晴れた空にふと想いを寄せる。過去に行く。

それは私の恋人に絡みつく不快な物体を消しに行く旅。

私の戦争をなくす旅。

1人、また1人と手にかける。

既に感覚は麻痺している。

泣き叫び命乞いをする不快な物体。

煩わしい会話はいらない。

鮮血を残し絶命する。

意気揚々と今に戻り大切な貴方に会いに行く。

そこにいたのは何時もの貴方。だけども、

何の輝きもない平凡、

笑顔のないただの人。

私は彼の過去をまるで何もない過去にすり替えただけなのだ。

そのことに、未来から来た女を前にして自らの鮮血を眺めながら気がついた。

この女も同じ苦しみを味わうのだろう。

無味無臭の貴方に続くこの道を。

薄濁りの視界から

朝目が覚めたとき、

幾らかの泪が頬を濡らしていた。

枕も湿り気を帯びている。

毎日のように貴方は夢で私に会いにくる。

わざわざ夢で会わなくても

本当に会いにきてくれたらいいのに。

私はリビングに置いてある貴方のホルマリン漬けに小言を言う。

日に日にしおれていく貴方は

私からは離れられない。

夢でしか笑うこともできない。

朝食の目玉焼きを焼きながら、

私の籠の中の貴方を見つめている。

いつか私もそこにいきたい。

少し硬めの目玉焼きを頬張りながら、

昔の男の籠を奥に追いやった。